どのような意図で点字の割当てを行なったのか、具体的に掲示したいと思います。
1.シフトJIS内字領域とUnicode点字領域を併用する
現在Windows環境下で一般的な文字コードは「シフトJIS」ですが、全世界の文字すべてに番号をふろうという志で作られている規格「ユニコード」には点字の領域も確保されており、これからの点字フォントはUnicodeの点字領域を利用すべきである、というのが正論です。
同時に、これまで点字フォントの主流であった「外字」領域の利用は、互換性を確保しにくい理由から劣勢になりつつあります。
しかし別な見方をすると、点字そのものが母国語にしっかりと依拠したものである以上、字形だけを独立させた点字は、使い勝手の悪いものになります。 Unicodeも外字も、その点で同じ短所を持ちます。 それは、普通のワープロソフトでは日本語キーボードと日本語の連関が追求されており、点字との結びつきは考慮されていないからです。
他方、シフトJISの内字領域(一般的な文字)に点字を当てはめたフォント(当サイトの墨点字・絵点字や、日本ライトハウスの墨点字)は、ワープロソフトでさくさくと点字が使えるといえども、文字の概念に番号をつけるという文字コードの本来の役割を考えると、邪道ともいえます。
点字フォントの文字コードは、このような「Unicode」か「外字」か「内字」かという選択をを迫られたとき、いずれを採っても一長一短なので、利用環境と目的を考慮した特別な工夫が必要になります。
「ふつうのパソコンのワープロソフトとキーボードですらすらと点字を書く」
そんなフォントを目指すと、内字に点字を当てはめるのがよいことになります。特別なソフトを使わずに、フォントだけでこの課題が達成できるからです。これによって、
「点字初心者でも簡単に利用できる」
という課題もクリアできます。
「できれば別の点字フォントによる文章データも利用したい」
という課題を掲げると、規格に準拠したフォントであるべきということになります。
以上の目標を実現するためには、点字の字形を確保する「Unicode」を採り、点字が拠り所とする日本語領域の「内字」を部分的に借用するのがもっとも合理的だと考えられます。
Unicodeがあれば外字の役割はなくなるという理屈から、外字は採用しないことにしました。
当サイトの点字フォントの「点字の文字コード割当て表」は、このような考えに基づいてUnicode点字領域を取り込みました。
特性をまとめておきます。
・ 普通のワープロソフトで、さくさくと点字フォントを使った文章が書ける。
・ 別の(Unicode点字領域のみに準拠した)フォントで作った文章データも、表示・訂正できる。
が、こちらの点字フォントで作成した文章データを、そのフォントで開くと表示できない場合が多い。
・ 外字を利用した点字フォントで作った文章データとの互換性はない。
・ 別の文字コード割当てによる点字フォントを使った文章データとの互換性はない。
2.使用する領域/しない領域
シフトJIS内字領域への点字の割当てに関しての方針について
・ 必要十分に定義する。
必ずしも多くの文字コードに点字を当てはめればよいわけではないと考え、シンプルかつ十分な
割当てを心掛けることを、基本方針としました。
・ 全角文字のみを定義する。
半角文字を使用すると、ワープロソフトによっては文字の整列に不具合が生じるため、半角文字
に点字の割当てをしていません。
・ 日本語ではひらがなを、英字では小文字のみを定義する。
点字は表音文字で、ひらがなとカタカナ、アルファベットの大文字と小文字とでは全く同じ表記
になります。それを書き分けることにあまり意味はなく、かえって煩雑さを生むと考えたので、
どちらか一方のみに点字を配置することにしました。
キーストロークと表示の連関がよりスムースであり、また、点字の点の丸みとイメージが重なる
のは、「カタカナ/大文字」よりも「ひらがな/小文字」の方であると考え、こちらを採用しました。
・ 漢字による表記は視覚的に煩雑になるので未定義を心がけました。
ただし、漢数字には、点字の数字を割当てています。
というのは、アラビア数字に、より使用頻度の高い点字を割当てたかったからです。
・ 「全角なのに半角文字の処理がなされる場合のある文字」は使用しない。
Word2000などのワープロソフトによっては、括弧(){}「」や句読点、。,.などの特定の文字が、
全角文字であるにも関わらず半角のように処理されてしまう場合があります。それで点字同士
が重なり合う不具合が生じたりします。
これは、文字幅や文字の間隔の設定を調整してもコントロールの利かないためなので、こういっ
た文字には点字の割当てを避けました。
3.よく使う文字を、よく使うキーに割当てる
・ アラビア数字
「1」から「6」には、点字の「1の点」から「6の点」を割り当てました。
「点字の数字」をここに割り当てなかったのは、ひらがなやアルファベットと重複する文字が多いこ
と、それから、使用頻度の高い「4の点」(拗音)や「5の点」(濁点)や「6の点」(半濁点)を、瞬時に
使えるキーに配置したかったからです。
それから、句読点です。句読点はブラインドタッチでは通常、右手中指と薬指で行ないます。そこで
、同じ指を使用する「8」に点字の読点を、同じく「9」に点字の句点を割り当てました。
句読点そのものに点字の句読点を割り当てなかったのは、ワープロソフトの処理との兼合いを考慮
したためです(ソフトによっては文字揃えに支障が出てくるため)。
・ キーボード最上段
アラビア数字への割り当ての流れで、キーボード最上段の割り当てには、すべて使用頻度の高い
順に点字を配置しようと考えました。拗音・特殊音の類の表記に使う点字です。
拗音は「4の点」ですが、つぎに使用頻度の高い拗濁音「4・5の点」を「7」に割当てます。この調子
で拗半濁音「4・6の点」を「0」に当てます。
合拗音でよく使われる「2・6の点」は、「+」(プラス)や「?」(疑問符)と同じですが、これらのキー
は最上段にないので、「^」(アクサンシルコンフレクス)にもこれを割当てました。
もうひとつの合拗音「2・5・6の点」は読点と同じ記号なので、すでに「9」に配置されています。
さらに「ヴョ」に使用する「4・5・6の点」を、その形のとおり「|」(縦棒)に割当てます。
こうして、すべての日本語の音を表現するのに付属的に使用する点字を、キーボード最上段に割り
当てることができました。
・ 漢数字
アラビア数字に点字の数字を割当てなかったかわりに、漢数字にそれを割当ててあります。
漢数字を利用するには変換が必要ですが、難しいことではなく、また数字の使用頻度も仮名の入
力に比べて少ないと考えて、このようにしました。
・ 記号をそのまま
記号の文字コードに、そのまま点字のその記号を表す点字を当てはめたものがあります。
できればそれが一番わかりやすいからです。
ー(長音)、・(中点)、+、−、!、?、/
8の点を付加して使う記号でそのまま当てはめたものは次のとおり。
&、#、*
〜(チルダ)は、3・6の点を2文字重ねて使用しますが、3・6の点に当てはめました。
・ 形のまま
その形状からのイメージも考慮して当てはめたもの。
|(縦棒)、_(アンダーバー)、<、>
・ 数符を@に
数符は分かりやすいものにしようと考え、アットマークを当てはめました。
・ カッコと外国語引用符
ここがじつは、もっとも悩んだ割り当てです。
割当ては、カッコに¥を、外国語引用符の開きに%、閉じに$としました。
ふつうのカッコは開きも閉じも同じ2・3・5・6の点なので、キー配置の離れた¥でいいでしょう。
しかし、外国語引用符は、開きと閉じで、どちらに$と%とを当てはめればいいのか。
とても迷いました。
まず、素直なキー配置の見た目では、開きは左、閉じは右にくるので、開きに$、閉じに%と
割り当てるでしょう。
しかし、右左脳の連関性や、点字タイプライターの指の動きを考えると、右利きの人を基準に
すると、開きに%、閉じに$としても悪くありません。 また、それぞれのキーの隣を見ると、
#は1・4・6の点、&は1・2・3・4・6の点で、形としてはこの並び方の方がいい気がします。
キーストロークを考えても微妙です。外国語引用符開きをシフトキーと一緒に打つとして、
同じ人差し指で大文字符を打つのは、まとまりがあっていいですし、ワンストロークで閉じる際
にも、人差し指の%よりも、中指の$の方が安定性があると思います。(しかし逆に、同じ人差
し指での連打がよくないと考える方もいるかもしれません)
ここは、今でも多少、迷いの抜けないキー割り当てです。
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