【内容】 |
本書は、製造年代の古い沖縄製ガラス製品を収録した図鑑です。系統立てて琉球ガラスを解説した史上初めての本となります。 |
明治期末に技術的な起源をもつ琉球ガラスですが、現代のデザインにつながる擬洋風スタイルが確立したのは1950年代後半、沖縄がアメリカに統治されていた時代のことでした。
1972年の沖縄の日本復帰、沖縄観光ブームなど社会状況がめまぐるしく移り変わる流れの中で、琉球ガラスも様々な変化を遂げながら、沖縄県を代表する工芸品として人気を不動のものにしてゆくことになります。
南国の文化や自然を思わせるカラフルな色合い、厚手で温かみのある素朴な手づくり感、海のイメージとリンクする気泡やヒビ模様、異国情緒のある情熱的な装飾性など、琉球ガラスほど明確な特徴がいくつも定着しているガラス工芸品は、日本全国を見渡しても他に類をみません。また、確固たるスタイルを持った地域性のある手吹きガラス工芸としては、工房数も市場規模も国内随一を誇ります。
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ところがどういうわけか、琉球ガラスはこの約60年間もしくは110年間、わずかな例外を除きほとんど学術的な研究がなされることはなく、また日本のガラス工芸史からも見落とされてきました。そして、個人作家の作品集や自伝以外に、琉球ガラスについて詳しく解説された本はこれまで1冊もありませんでした。
本書では、1940年代〜80年代中頃の製品を主に取り上げ、沖縄の手づくりガラス工芸がどのようなものであったのか、その後どう変化してきたのかといった製品発達史を少し解説します。そして琉球ガラス製品を中心とする沖縄産ガラス製品を分類し、約600点に上る製品を豊富な写真で紹介致します。
琉球ガラスの美しい風合いや絶妙なセンス、成形の技巧など、改めてその魅力に迫ることができたと思います。琉球ガラス熟練職人の方々にも、きっと驚きをもってご覧いただけるのではないかという「年代物」図鑑です。
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【出版の経緯】
私は6年前から琉球ガラスの歴史を調べている在野研究家です。あちらこちらの資料を漁り、図書にまとめることを前提に、多くの工房を訪れて職人の方々や琉球ガラスに詳しい方々への取材を重ねてきました。しかし研究・執筆はたびたび中断し、いつまでたっても出版の目処が立たず、昨今は取材もストップし行き詰まっておりました。
手元にはすでに、研究執筆の過程で個人蒐集してきた2000点以上の琉球ガラスが所狭しとひしめいていました。これらのコレクションの多くは比較的古い時代に作られたもので、世間では忘れられてしまったものや、琉球ガラスの熟練職人にとっても懐かしい製品などの第一級資料も含まれています。
私は苦肉の策で、研究材料の一部である琉球ガラスの製品コレクションを特化した形にまとめ、まずはとにかく世に問うことを決めました。それからまた1年2ヶ月という歳月をかけて、何とかこうして図鑑として刊行するに至りました。
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【本書への思い】
琉球ガラス業界ではよく知られていることですが、「何をもって琉球ガラスと呼ぶのか?」という疑問に答える明確な定義づけは、実は非常に難しいところがあります。
琉球ガラスは具体的には製品ですから、モノが中心となっている文化といえます。ところがこれまで琉球ガラス製品の現物がまとまった形で体系づけて並べられたり、検証されたことは一度もありませんでした。
そもそも古い時代の琉球ガラスが残っている場所は限られており、美術館や博物館でもあまり見られない、という散々な状況が続いています。
本書は厳密な学術書ではありませんが、紙の上に唯一無二の琉球ガラス博物館を築いて皆様にご覧いただきたいという意気込みで編集しました。 どういった製品を琉球ガラスと呼ぶのか。琉球ガラスはいかにして成立し、どのような変遷を辿ってきたのか。本書をめくることで、ある程度明瞭な共通イメージが得られるのではないかと期待しています。伝統を引き継ぐ若手の職人の方々にも、製作の参考に役立てていただきたいと願っております。
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『琉球ガラスの年代物コレクション』
〜 沖縄ガラス工芸図鑑 〜
2018年11月15日(遅延にて11月22日)発行。
手になじむA5サイズ。ボリュームの320ページ。
ソフトカバー、全ページカラー。
価格はちょっと高めの¥3,777(税別)。
※ただいま出版記念にて、送料サービス中です!
※増刷は致しません。売切れ次第、販売終了となります。
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ご愛顧の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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2018年11月 |
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著者・河西大地 |
※【訂正箇所等のお知らせ】
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