コラムB
〈「琉球ガラス」という名称はいつ、どのようにできたの?〉
前述のとおり、琉球ガラスの定義づけには非常に難しいものがありますが、ネーミングの由縁もまた、今のところ誰一人として正確に掴めている人がいないのが現状です。
吹きガラスの技術が沖縄に定着するのが1909年、琉球ガラスのスタイルの原形ができるのは1960年頃とされています。
その頃、「琉球ガラス」という名称はありませんでした。
「琉球ガラス」の名称は1970年代には散見されますが、一般化していたかどうかは明確になっていません。
遅くとも、1983年に設立された「琉球ガラス工芸協同組合」や、1985年創業の「琉球ガラス村」の頃には、ほぼ一般化していたといえるでしょう。
おそらく、名称の発生は1960年代、名称の一般使用の広がりは1970年代、名称の一般化は1980年代と、やや大雑把ですがそのように捉えて当たらずといえども遠からずといったところかと思います。
念のため、以下にいくつか「琉球ガラス」語源の有力説があるのでご紹介します。
A. 1960年頃、アメリカ輸出用の箱にペンで「RYUKYU」と書かれていた。この「RYUKYU」が「琉球ガラス」の語源であるという説。
B. 1965年創立(1968年操業開始)の「琉球硝子製作所」が「琉球ガラス」の語源であるという説。当時は製品自体を工房名で呼び分けるのが普通であったという証言がある。
C. 沖縄の古称「琉球」は、「沖縄」の語と区別したり歴史的雰囲気を出すために常用される。「沖縄ガラス」「県産ガラス」「琉球ガラス」などと呼ばれるうちに、しぜんに「琉球ガラス」に落ち着いたという説。
私の推測では、A〜C説の折衷案というつもりはないのですが、おそらく上記のいずれもがぼんやりとした雰囲気となり、ネーミングの由来となってきたのだろうと思われます。
秘密ではないけれどほとんど知られていない ちょっとディープな琉球ガラス・エッセイです。
ここでは、基本的な疑問にできるだけ答えてみたいと思います。
これほど有名なのに、不明点や誤解が多すぎる「琉球ガラス」。