コラムC
〈ヒビ模様や気泡は、琉球ガラス独特の特徴なの?〉
夏のさわやかな雰囲気、透き通る美しい海、南国の照り返す日差し……。
そんなイメージをガラスで表現したかのようなヒビ模様や気泡は、琉球ガラスで多用される技法です。
ではこれらの技法は、琉球ガラスのオリジナルなのでしょうか?
じつは、そうではありません。
沖縄の文化はチャンプルー(まぜこぜ)文化と評されることがあります。
古来より海洋貿易で栄えた島国琉球では、世界各地の文化を上手に取り入れ取捨選択し、まぜこぜにして沖縄風にまとめ上げるという文化の育て方をしてきました。
私などはつい、(まぜこぜでない文化など、地球上にあるのだろうか?)と脇道にそれるようなことを考えてしまいますが、……それはさておき、近現代においても沖縄のチャンプルー精神は息づいています。琉球ガラスも例外ではありませんでした。
ガラスを熱いうちに水にジュッと浸すことでヒビ模様を入れる技法は、琉球ガラスでは当初から用いられてきました。
この技法の発祥の地は、イタリアのヴェネチアです。ガラス作りの長い歴史を持つヴェネチアが最盛期だった16世紀頃に、このヒビ模様の技法「アイス・クラック(ア・ギアッチョ)」が生まれました。
泡入りガラスの技法に関しては、琉球ガラスの歴史の項に書いたので、そちらを参照ください。
ざっとだけ述べておけば、泡入りガラスは沖縄の職人によって独自に開発されましたが、世界のガラス工芸史を眺めれば、沖縄独自の発想ではありませんでした。
とはいえ、たとえば日本のガラス工芸をみると、これだけ泡入りガラスが一般的なデザインとして広く浸透しているのは琉球ガラスだけです。
秘密ではないけれどほとんど知られていない ちょっとディープな琉球ガラス・エッセイです。
ここでは、基本的な疑問にできるだけ答えてみたいと思います。
これほど有名なのに、不明点や誤解が多すぎる「琉球ガラス」。